正負の数にかんする解説と計算問題
中学校ではじめて学ぶ単元です。
中学校では算数を数学と呼ぶようになり、学習内容がより観念的になります。
学習の中で扱う「数」についても、算数では0以上の整数、小数、分数だけを扱ってきましたが、数学ではそれ以外の数についても勉強します。この単元では0より小さい数について学び、それも含めた加減乗除の方法などをみていきましょう。
正の数・負の数
1.正負の数と符号
私たちは言葉を話すとき、「上/下」「東/西」「余る/足りない」など反対の意味を表す言葉を使い分けています。
しかし、これを数学の世界で考えるとどうなるのでしょう。
例えば「平均点より6点高いこと」と「平均点より6点低いこと」、「東に20m進むこと」と「西に20m進むこと」、「飴が13個余ったこと」と「飴が13個足りないこと」を、数を使ってわかりやすく表現できないでしょうか。
これを解決するのが正の数と負の数です。
今まで学習してきた0より大きい数のことを「正の数」といい、新しく学ぶ0より小さい数のことを「負の数」といいます。
正の数は数字の前に正の符号+(プラス)をつけて +3、+297、+8.6 のように表します。
正の符号+は省略することもできます。
負の数は負の符号-(マイナス)をつけて -3、-297、-8.6 のように表します。
正負の符号は基準よりも高いか低いかを表すときにも用いられ、基準より高いときには正の符号+を、基準より低いときには負の符号-を使います。
それでは正負の符号を使って、先ほどの問題を考えてみましょう。
例題
(1) 「平均点より6点高いこと」と「平均点より6点低いこと」を、正負の符号を使って表せ。
(2) 「東に20m進むこと」と「西に20m進むこと」を、正負の符号を使って表せ。ただし、東に進むことを正の数で表すことにする。
(3) 「飴が13個余ったこと」と「飴が13個足りないこと」を、正負の符号を使って表せ。
考え方
(1) 平均点より高いのは正の数で低いのは負の数で表します。
(2) 東に進むのは正の数で、西に進むのは東に進むことの反対なので負の数で表します。
(3) 飴が余ったことは正の数で足りないことは負の数で表します。
答
(1) +6、-6 (2) +20、-20 (3) +13、-13
2.数直線
直線上に数を配置したものを数直線といいます。数直線では、0より右側が正の数、0より左側が負の数になります。
正の数では0(原点)から遠ざかるほど大きい数になりますが、負の数では0から遠ざかるほど小さい数になります。
例題
次の数を数直線上に配置せよ。
(1) +1 (2) -2 (3) +4.3 (4) -3.7考え方
特に負の数については注意が必要です。負の数では0から左方向にいけばいくほど値は小さくなります。
答
数直線上で、0からの距離のことを絶対値といいます。+5の絶対値は5、-1の絶対値は1、-4.2の絶対値は4.2になります。
小数でも分数でもない+1や-3や0などの数を整数と呼び、正の整数のことを自然数と呼びます。
例題
絶対値が2以下の整数をすべて求めよ。
考え方
絶対値が2になる整数には+2と-2のふたつがあります。
答
-2、-1、0、+1、+2の5つ
正負の加法(足し算)、減法(引き算)
数学では足し算のことを加法(かほう)、その答えを和といい、引き算のことを減法(げんぽう)、その答えを差といいます。
ここでは正負の数の加法、減法について勉強しましょう。
1.正負の数の加法
正負の数の加法について数直線を使ってみていきます。まず、正の数どうし、負の数どうしの足し算について考えてみましょう。
正の数に正の数を足すとその結果は数直線の正の方向(右方向)に移動します。
(+2)+(+3) = (+5)
負の数に負の数を足すとその結果は数直線の負の方向(左方向)に移動します。
(-1)+(-3) = (-4)
以上のことから、同じ符号の数を足すときには絶対値の和に共通の符号をつければよいことがわかります。
次は、正の数と負の数の足し算について考えてみましょう。
足される数のうち負の数の絶対値のほうが大きいときにはその結果は負の数になります。
(-4)+(+2) = (-2)
足される数のうち正の数の絶対値のほうが大きいときにはその結果は正の数になります。
(+3)+(-1) = (+2)
以上のことから、異なる符号の数を足すときには絶対値の差に絶対値の大きいほうの符号をつければよいことがわかります。
例題
数直線を使って次の計算をせよ。
(1) (-1)+(-4)
(2) (-3)+(+1)
(3) (+2)+(-5)
答
(1) (-1)+(-4) = -5
(2) (-3)+(+1) = -2
(3) (+2)+(-5) = -3
正負の数の加法をまとめると次のようになります。
同符号の2数の加法においては、2数の絶対値の和に共通の符号をつける。
異符号の2数の加法においては、2数の絶対値の差に絶対値の大きいほうの符号をつける。
足される2数が同符号か異符号かに注意して次の計算をせよ。
(1) (-8)+(-47)
(2) (-19)+(+8)
(3) (+12)+(-15)考え方(1)はふたつの数が同符号で、(2)(3)はふたつの数が異符号です。答
(1) 絶対値の和8+47 = 55 共通の符号の-をつけると 答えは-55
(2) 絶対値の差19-8 = 11 絶対値が大きい-の符号をつけると 答えは-11
(3) 絶対値の差15-12 = 3 絶対値が大きい-の符号をつけると 答えは-3
2.正負の数の減法
正負の数の減法は、引く数の符号を変えて加法として計算します。
正の数を引いている式は負の数を足している式に、負の数を引いている式は正の数を足している式に置き換えます。
例題
次の計算をしなさい。
(1) (+42)-(+3)
(2) (-8)-(-4)
(3) (-37)-(+5)
答
(1) (+42)-(+3) = (+42)+(-3)
= +39
(2) (-8)-(-4) = (-8)+(+4)
= -4
(3) (-37)-(+5) = (-37)+(-5)
= -42
3.いろいろな加法、減法
正負の数の式では()や+を省略することもできます。
計算に慣れてきたら()のない式にしてから計算するようにしましょう。
例題
()をはずした式に置き換えてから計算せよ。
(1) (-33)+(+5)
(2) (+17)-(+5)
(3) (-4)+(-8)-(-11)
答
(1) (-33)+(+5) = -33+5
= -28
(2) (+17)-(+5) = 17-5
= 12
(3) (-4)+(-8)-(-11) = -4-8+11
= -12+11
= -1
例題
次の計算をせよ。
(1) 12-26+4
(2) -127+100-3
(3) 38+(6-15)+11-1
考え方
加減の混在した式を計算するときには、同じ符号の数をまとめてから計算しましょう。
答
(1) 12-26+4 = 12+4-26
= 16-26
= -10
(2) -127+100-3 = -127-3+100
= -130+100
= -30
(3) 38+(6-15)+11-1 = 38-9+11-1
= 38+11-9-1
= 49-10
= 39
正負の数の乗法、除法、累乗
数学では掛け算のことを乗法(じょうほう)、その答えを積といい、割り算のことを除法(じょほう)、その答えを商といいます。
ここでは正負の数の乗法、除法について勉強しましょう。
1.正負の数の乗法
正負の数の乗法については、はじめに符号を決めてから絶対値の積を求めます。
例題
(1) (+5)×(+2)
(2) (+8)×(-5)
(3) (-3)×(-7)
(4) (+4)×(-7)×(+2)
考え方
式に含まれる負の数が偶数個あれば積の符号は+に、奇数個あれば積の符号は-になります。
次にそれぞれの数の絶対値の積を求めて、符号をつけるだけです。
答
(1) 負の数は0個(偶数個)なので符号は+。絶対値の積は10。答えは+10 = 10。
(2) 負の数は1個(奇数個)なので符号は-。絶対値の積は40。答えは-40。
(3) 負の数は2個(偶数個)なので符号は+。絶対値の積は21。答えは+21 = 21。
(4) 負の数は1個(奇数個)なので符号は-。絶対値の積は56。答えは-56。
2.正負の数の除法
正負の数の除法について考える前に、逆数ついて理解しましょう。
ふたつの数の積が1であるときに、いっぽうの数は別の数の逆数であるといいます。
例題
次の数の逆数を求めよ。
考え方
答
正負の数の除法では、ある数で割った結果はその逆数をかけた結果と同じになることを利用して、除法を乗法に置き換えて計算します。
例題
次の商を求めよ。
考え方
逆数を利用して乗法に置き換えて計算します。
答
3.正負の数の累乗
同じ数を何度か掛け合わせたものを累乗といい、
のように表します。
「○回かける」という意味で、数の右肩に書かれている小さな数字のことを指数と呼びます。
符号のついた数の累乗は、符号まで含めた数を()で閉じてから(○○)の右肩に指数を書きます。
次の累乗を求めよ。
考え方
累乗されている数はどれなのかに注意して解きます。
(2)で3乗されているのは-2ですが、(3)で2乗されているのは-3ではなく3になります。答
四則計算、分配法則
1.四則混合計算
正負の数の加減乗除の方法がわかったところで、四則の混合した計算式を解いてみます。
このときにまず注意しなければならないのは計算の優先順位です。
また計算では必要に応じて交換法則、結合法則なども利用してください。
次の計算をせよ。
(1) (-3)+12×(-4)
(2) -32+{5-6×(-2)+1}
考え方
式の計算では()があったらその中の計算を最優先し、次に乗除の計算をしてから残りの計算をします。
優先順位が同じ計算については左の計算から先にすることになります。答
(1) (-3)+12×(-4) = (-3)+(-48)
= -51(2) -32+{5-6×(-2)+1} = -32+{5-(-12)+1}
= -32+(5+12+1)
= -32+18
= -14
2.分配法則
分配の法則を使うと、複雑な計算式を簡単にすることができます。
分配の法則 (○+□)×△ = ○×△+□×△
例えば、
という計算をこのまま()の中から計算していくと計算が複雑になってしまいますが、次のように分配法則を使うと簡単に解けます。
同様に 12.5×3.8+12.5×6.2 という計算をこのまま計算すると小数の筆算を何度もすることになりますが、次のように分配法則を逆に使うと簡単に計算できます。
12.5×3.8+12.5×6.2 = 12.5×(3.8+6.2)
= 12.5×10
= 125
正負の数まとめ
この単元では次のことを勉強しました。
◎正の数、負の数
・0より大きい数のことを正の数といい数字の前に正の符号+をつけて表す。
正の符号は省略することもできる 例)+17 +8.1 34
・0より小さい数のことを負の数といい数字の前に負の符号-をつけて表す。
例)-5 -24.3
◎正負の加法、減法
・同符号の2数の加法では2数の絶対値の和に共通の符号をつける。
・異符号の2数の加法では2数の絶対値の差に絶対値の大きいほうの符号をつける。
・2数の減法では引く数の符号を変えて加法として計算する。
◎正負の数の乗法、除法
・同符号の2数の乗法では絶対値の積に正の符号+をつける。
・異符号の2数の乗法では絶対値の積に負の符号-をつける。
・除法では割る数の逆数を利用して乗法として計算する。