慶應義塾中等部の入試問題傾向と受験対策

慶應義塾中等部は、難関私立一貫教育校として人気の高い慶應義塾が設置する、東京都港区三田にある共学の中学校です。1905年創立の歴史と伝統のある校風や慶應義塾大学に内部進学できること、港区三田という立地、さらに共学校ということから、非常に人気のあります。近年では、俳優の芦田愛菜さんの出身中学校としても知られていますが、スポーツ選手から起業家、タレントなど、多くの著名人を輩出したことでも知られています。

この記事では、慶應義塾中等部の特色に加え、入試問題の傾向や受験対策についてご紹介していきます。

慶應義塾中等部の概要と特色

自分が目指す学校が自分に合う学校なのかどうかを知ることは、入学後のミスマッチを防いだり、受験のモチベーションを保つうえでも重要です。早い段階で学校案内を手に入れるなどしながら、気になる学校がどのような学校なのか情報収集を重ねていきましょう。

ここでは、慶應義塾中等部の基本的な学校情報や特色についてご紹介します。

所在地・アクセス

〒108-0073

東京都港区三田二丁目17番10号

【最寄り駅からのアクセス】

JR    (山手線・京浜東北線)田町駅から徒歩約15分
地下鉄  (都営三田線・浅草線)三田駅から徒歩約15分
     (都営大江戸線)赤羽橋駅から徒歩約25分
     (東京メトロ南北線)麻布十番駅から徒歩約15分
     (都営三田線・東京メトロ南北線)白金高輪駅から徒歩約15分
バス 慶應正門前から徒歩約3分
    渋谷←→田町駅(田87)
    東京駅南口←→等々力(東98)
    新宿駅西口←→田町駅東口(田70)

慶應義塾中等部の教育理念

慶應義塾の学祖・福澤諭吉の残した「慶應義塾の目的」と「独立自尊」の精神に基づき、基本理念を下記のように定めています。

自立した個人を育む、自由な教育
自ら考え 自ら判断し 自ら行動して
 その結果に責任を持てる 自立した個人を育む

引用元:慶應義塾中等部学校ホームページ

この基本理念の実現のため、「授業」「行事」「校友会(他校で言う部活動)」の三つを「三本の柱」として学校活動を進めています。

慶應義塾中等部の特色

上記の基本理念のもと、慶應義塾中等部では、「将来のリーダー」にふさわしい人間の育成を目標に様々な特色のある教育活動が行われています。

慶應義塾の塾内では、

中等部は男女共学75年間の歴史の中で集団生活における幅広い体験を重視する学校、普通部は長い伝統のもとで個性の伸長を図る男子校、湘南藤沢中等部は時代の流れに先行する試みを盛り込んだ中高一貫の男女共学校といえるでしょう。

引用元:慶應義塾中等部学校案内

というように位置付けられています。

①自由な校風

慶應義塾中等部では、慶應義塾の建学の精神に則り、中学校としては比較的自由な校風で、普段の生活の中では登校時の服装も自由です。

中等部に学ぶ生徒諸君には、 自ら考え、 自ら判断し、 自ら行動して、その結果に責任を持てる自立した 人物になってほしいと願っています。 集団生活を行う上で、ある程度の規則を設定することはもちろん 必要です。しかし、規則があるからやむを得ずに守るのではなく、 生徒各人がなぜ好ましくないのか を「気品の泉源」「知徳の模範」の主旨に照らし合わせて考える習慣を養うため、 「べからず」 式の禁止事項を最小限にとどめ、 自由の中に規律を求めることを目指しています。

引用元:学校生活|慶應義塾中等部

とあり、いわゆる「校則」と呼ばれるようなものは存在しません。

②活発な校友会

校友会活動とは、部活動のことを指します。校友会への加入は強制ではありませんが、活動は原則として週に3日以内と決められており、「学芸部」と呼ばれる文化系クラブと運動部を兼部する生徒も多くいます。

【運動部】

野球部、サッカー部、ラグビー部、陸上競技部、バスケットボール部、バレーボール部、テニス部、卓球部、水泳部、フェンシング部、剣道部、柔道部、弓術部、馬術部、女子ソフトボール部、山岳部、体操部

【学芸部】

文芸部、英語研究会、コンピュータ研究会、美術部、地理研究会、歴史部、化学研究会、気象天文生物愛好会、図書の会、社会研究会、器楽部、コーラス部、報道研究会、模型部、マンドリンクラブ、将棋部、近代劇研究会、カメラクラブ、書道部、料理と手芸の会、茶道部

③充実した学校行事

慶應義塾中等部の三本柱のひとつでもある学校行事。一貫校である強みを活かし、充実した施設や塾内外・国内外の繋がりを活かし、多くの行事が行われています。

  • 4月 – 入学式、新入生歓迎会
  • 5月 – 遠足、慶早会
  • 6月 – 校内大会:クラス対抗のスポーツ大会
  • 7月 – 古典芸能鑑賞会、校内大会(水泳競技)、林間学校(宿泊行事)
  • 8月 – 英国の修学研修旅行、夏のハワイ研修旅行(希望者)
  • 10月 – 運動会
  • 11月 – 展覧会(校友会の成果発表会)、校内大会(サッカー、バレーボール、綱引き)
  • 12月 – 音楽会、生徒会総会
  • 1月 – キャリア講座
  • 3月 – 卒業旅行、卒業式、春の英国研修旅行(希望者)

特に、11月に行われる展覧会は、学芸部や林間学校での研究の発表、運動部の招待試合などが行われ、学校の様子を知る絶好の機会です。中等部を卒業後は全員が塾内の一貫校に進学できる点も、生徒が行事や校友会活動に注力できる要因のひとつです。

④慶應義塾一貫教育校への内部進学

慶應義塾中等部の最大の特徴は、慶應義塾の設置する後期中等教育を行う学校のうち、湘南藤沢高等部以外の学校に内部進学できる点にあります。

学校ホームページによると、昨年度の卒業生250名の進路は、

【男子】

慶應義塾高等学校:137名

慶應志木高等学校:4名

慶應義塾ニューヨーク学院高等部:1名

慶應義塾湘南藤沢高等部:10名

その他(塾外進学):4名

【女子】

慶應義塾女子高等学校:91名

慶應義塾湘南藤沢高等部:0名

慶應義塾ニューヨーク学院高等部:2名

その他(塾外進学):1名

となっています。

先述の通り、湘南藤沢高等部への内部進学はできないため、進学した生徒は一般入試を経て進学したものと考えられます。

慶應義塾中等部の入試情報

慶應義塾中等部の1学年の人数は240名程度で、そのうち、中学入試での募集人数は男子が約120名女子が約50名です。

幼稚舎からの内部進学生の人数によって、合格者数は変動するので注意が必要です。

幼稚舎からの内部進学者は、女子は約50人中45人前後であるのに対し、男子は約100人中10人台~30人台と変動が大きい。以前は普通部に進学するものがほとんどで、中等部への進学者は少なかったが、2021年以降増加している。

とあり、2023年度は男子32名、女子47名が幼稚舎からの内部進学生です。内部進学生が増加しつつあるということは、中学入試における合格者数が減っていく傾向があるということなので、よりしっかりとした入試対策が必要ですね。

なのでここでは、一般入試についての概要をお伝えします。

一般入試の概要

詳細については、必ず公式に発表されている募集要項をご覧ください。

受験資格

学校ホームページの募集要項に記載された受験資格は、次の通りです。

受験資格としては、 下記のア、イのいずれかに当たる者としています。

ア 2024年3月に小学校、またはこれと同等の学校を卒業見込みの者。

イ 次の(1)(2)の条件を共に満たしている者。

(1)2011(平成23)年4月2日から2012(平成24)年4月1日までに生まれた者。

(2)海外に在住し、2024年4月以降日本に居住予定の者。

*なお、上記ア、イ共に東京都およびその周辺に保護者(代理可)が居住、 または居住予定の者に限ります。

出願方法・期間

2023年12月21日(木)13:00 ~ 2024年 1 月11日(木)19:00
※インターネット出願に加え、郵送による出願書類の提出もあります。

試験日程・場所・内容

【一次試験】

日時:2月3日(土)8:00~12:00
場所:慶應義塾大学三田キャンパス
内容:筆記試験(持ち物…受験票・筆記用具(鉛筆・シャープペンシル・消しゴム))

科目 時程 試験時間 配点
国語 9:05~9:50 45分 100点
社会 10:15~10:40 25分 50点
理科 10:55~11:20 25分 50点
算数 11:45~12:30 45分 100点

 

合計300点満点で行われ、特に重視される教科や教科ごとの足切り点などはありません。

合格発表日時:2月4日(日)15:00~

【二次試験】(一次試験合格者のみ)

日時:2月5日(月)
 女子 8:00頃~11:00頃
 男子 10:00頃~18:00頃

場所:慶應義塾中等部校舎

試験内容:体育(受験証・体操着・体育館履き・衣服を入れる袋が必要です)・面接(保護者同席の面接)

合格発表:2月6日(火)15:00~

慶應義塾中等部の入試に向けた傾向と対策

2023年度の入試では、男子が6.11倍、女子が8.96倍と、高い倍率を誇ります。そんな難関校でもある慶應義塾中等部の入試を突破するために、4教科の出題の傾向と対策をお伝えしていきます。

国語の出題傾向と対策

2023年度は、小説、随筆、新聞コラム、総合的な知識を問う問題、漢字の書き取りの大問5題で問題が構成されていました。問題は選択肢問題が多く、描かせる問題も抜き出しさせる程度です。

出題傾向

読解問題の素材分としては、最近は物語文は出題されておらず、物語に比べると随筆を多く出題している傾向があります。説明的文章のトピックは多岐にわたるため、日頃から多くの問題に接しておく必要がありそうです。

そのほか、知識問題が多く出題されることが特徴として挙げられます。慣用句やことわ、敬語の使い分けは中学入試では頻出ではありますが、それに加えて、数詞や文法について問われたこともあります。

漢字の書き取りに関しても、小学校配当の漢字から出題されているので、問題なく解けるでしょう。ただし、読み方が特殊なものが出題されることもあるので、ある程度の演習は必要です。

出題される文章自体の難易度は、難関校の入試問題としては標準的なレベルだと言えるでしょう。だからこそ、平均点は高くなることが予想されるので、ミスをしないように丁寧に問題に向き合いたいですね。

対策

読解問題に関しては、過去問も含め、様々な演習問題を繰り返し解くことで、問題を読み解くための集中力と読解力を身に着けていきましょう。また、昨年度の天声人語からの言葉に関する文章のように、身近な、でも意識しなければそのまま通り過ぎてしまうような事柄にも目を向け、自分で考える力が必要だと言えるでしょう。そのために新聞を読むなどして社会の動きを把握しておくことが効果的です。

漢字の問題に関しては、これまでに学習したものを取りこぼしなくできていれば、十分に対応できるでしょう。

社会の出題傾向と対策

2023年度は、地理・歴史・公民・時事問題の全ての範囲から出題されました。近年問題の数は減少傾向にありますが、それでも時間との勝負と言っても過言ではないくらいの出題量があるので、スピードに慣れておくことも必要です。

出題傾向

小学校の社会の全範囲から、まんべんなく出題されています。しかし、完全に分野ごと出題されるわけではなく、時事問題の中に公民の学習に関する内容が混ざっていたり、地理の問題とも歴史の問題とも絡んでくるようなことが出題されるなど、科目横断的な問題が多く出題されるのが特徴です。地理に関しては自然や気候、産業の特徴について問う問題、地域の特色について、原始から現代まで幅広く、公民分野では日本国憲法や国会・内閣・裁判所との関係についてがよく出題されています。

さらに慶應義塾独特と言えるのが、学祖である福澤諭吉に関する問題が出題されることです。頻度としてはかなり高いと言えるので、しっかり準備をしておきましょう。

出題の形式も、会話文(リード文)を読んだり、地図や図版、史資料について読んだりとバラエティーに富んでいると言えるでしょう。個々の難易度は基本的なレベルですが、かなりの情報処理能力が求められますので、併願先として受験する場合にも、数年分は過去問を解いておいたほうがよさそうです。

対策

かなりのスピードが求められるので、見直しをする余裕はないことも十分に考えられます。日頃から正確な計算力を身につけられるよう、演習を泥臭く続けていくことが必要でしょう。

分野を超えた融合的な問題が多いので、言葉を暗記するだけでは太刀打ちできないものも多く、出来事や事象を大きな視点でとらえられるようになることがポイントです。日頃から感度は高く持っておくとよいでしょう。

また学祖・福澤諭吉に関する問題への対策は、学校ホームページやスクールガイドに、学校の歴史や福澤諭吉の考え方、建学の精神がしっかりと書かれているので、よく読んでおきましょう。

理科の出題傾向と対策

2023年度は、生物・地学・化学・物理の書く範囲から大問1題ずつ出題されました。広く知識を問う問題が多いため、各分野で頻出の内容に関しては丁寧に整理しましょう。

傾向

文章で書く問題が出題されることはまれだと言えそうです。生物分野では植物や動物の分類や体のしくみ、化学分野では物質の性質や水溶液について、物理分野では電気、地理分野では天体や気象についてがよく出題されています。また、観察や実験について尋ねる問題も多く出題されます。難問や奇問の類は少ないですが、短い時間の中で正しい知識を素早く使いこなすことが求められます。

対策

出題範囲は広いですが、基本的な問題が多いので、速く正確に解く力を身に着けることが重要でしょう。図,グラフを読み取る力、実験の手順などについても確認しておき、身近な人に自分で説明できるようにしておくとよいでしょう。
日頃から、身の回りで見られる現象に興味や関心を持つことができるかどうかを判断されているので、気になったものについては、積極的に調べてみるようにしましょう。

算数の出題傾向と対策

例年、答えを選択肢で答える、中学入試では比較的珍しい方式をとっています。

2023年は、計算問題、小問集合、図形の小問集合、速さ、立体図形、パズルのような問題の6つの大問で構成されていました。前半の問題はほぼできた前提で、立体図形とパズルの問題でどれだけ得点できたかが合否を分けたと言えるでしょう。

出題傾向

特定の分野に弱点を作らないようにし、すべての分野の力をしっかり身に着けておく必要があります。問題は典型的な問題が多いため、多くの問題が一度はどこかで見たことがある問題なはずです。一方でスピードが求められるので、問題を2・3回読んでも解法が思い浮かばないようであれば、潔く後回しにする勇気も必要でしょう。

最近の出題傾向を見ると、四則計算や数の性質、場合の数、規則性角度や面積、長さを求める問題のほか、中学受験特有ともいえる濃度を求める問題や旅人残、売買損益を計算するような問題なども多く出題されています。

対策

とにかく基本問題を徹底的に反復して精度を高めていきましょう。さらに、スピードを上げていくために、計算を省略する手段を身に着けていきましょう。過去問をよく分析し、どの問題から手をつけるのか、ある程度目星をつけておくとよいです。

中学入試に特徴的な、旅人算や濃度の問題、つるかめ算などもしっかりマスターしておいてください。

そして、解けない問題に時間をかけ、解けるはずだった問題に手を付けられなかった…といいう状態を避けるために、解けない・時間がかかりそうだという問題は思い切って飛ばすという勇気と、それを判断する目を養っていきましょう。

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慶應義塾中等部の入試は、基本的な問題がほとんどであるものの、だからこそ、平均点が高くなることが予想され、ひとつのミスが合否を分けるような、ハイレベルな入試だと言えるでしょう。合格を掴むためには、一人ひとりの苦手にあった対策と得意を伸ばすこと、そして全体的に問題を解くスピードと精度を上げていく必要があります。

いくら、問題が基本的なレベルであったとしても、速さや正確さが求められるからこそ、中学入試に向けた学習は必須です。お子様やご家庭での勉強だけではサポートや対策に限りがあるため、個別指導塾を活用した計画的な学習がおすすめです。

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参考サイト

慶應義塾中等部ホームページ

慶應義塾中等部デジタルハンドブック

慶應義塾中等部Wikipedia